TOKYO INTERSECTING VISIONS
東京 交差するふたりの視点
大西みつぐ & ジェレミー・ステラ
会期: 2015年10月1日 ~ 12月25日
本展では、大西みつぐとジェレミー・ステラの写真をパラレルに提示することでこの都市で今まさに起こっている事実を過去、現在、未来という時間軸の上で、“現地人”と“異邦人”という眼差しを通して検証してみたいと考えました。
交差する視点、決して交わり合うことはないけれど、お互いを意識し、存在を認め合う姿勢、ここには東京という場所が持つ“気配”、決して声高ではないけれど、“確かな事実”が描きだされています。都会ならではのさまざまな出会いについて、写真を見る事を通して考えてみたいと思います。
私たちが目にする都会の風景は、いつも巧みに構成され、的確な動きがあり、こちらも巻き込まれてゆく。それらは舞台芝居でもなければ映画でもないことを誰でも知っている。当たり前の「現在」だ。
その「現在」を賛辞しようが批判しようが、もちろんそれぞれの自由ではあるのだが「そこに人がいる」という尺度をいかに持ち得ているかどうかが鍵になるだろう。
大西 みつぐ
東京について語る時、西欧人は渋谷や新宿の高層ビルや密集した人ごみを思い浮かべるのではないだろうか?しかし現実の東京はパリより更に低い建物が立ち並ぶ平面的な都市である。独立した個人住宅が平べったい土地に、まさに密集している。狭い通りに面した限られた土地にそれぞれの家族が空に向かって開かれた繭のような、そして同時に通りからはしっかり隠された小さな我が家を建てている。「東京の家」というプロジェクトではドキュメンタリー写真の手法を用い、これらの住宅の外観と周囲の環境を示すことで、これらの建築にアプローチを試みた。つまり、ふたつを分断させた世界、ストリートフォトとしての人間性と建築写真の完成度を両立させることを目指したかった。建物とはその内側の住空間と外観を保つべくデザインされるはずだ。人間不在の建築などは無意味であるべきだ。
このプロジェクトで撮影された家々は日本でも著名な建築家によって設計されたもので、広大な東京という都市の中にあたかも宝石のように点在している。日本における建築法は歴史遺産への意識が不足していることもあり、非常にリベラルである。よって建築家はそれらを通して彼等の考えを表現できている。東京はまさに野外劇場、住人たちは役者としてまたオーディエンスとして、この世界のユニークなセットとして機能している。
ジェレミー・ステラ
大西みつぐ│ Mitsugu OHNISHI
1952年東京深川生まれ。東京綜合写真専門学校卒業。 1985年「河口の町」で第22回太陽賞、1993年「遠い夏」ほかにより第18回木村伊兵衛写真賞受賞。同年「江 戸川区文化賞奨励賞」授賞。 1970年代から東京の下町を拠点として撮影活動を続けるほか、大学や専門学校などで若い世代を指導、また 各カメラ雑誌において記事執筆、月例コンテスト審査員を歴任するなど写真愛好家へのアドバイスも積極的 に行なっている。近年は「すみだ写真博覧会」(2006)、「浦安写真横丁」(2008),「深川フォトセッション」 (2010)など、地域と写真を考える手作りイベントの企画実施も手がけてきた。個展、企画展多数。東京都写 真美術館、国際交流基金、川崎市民ミュージアム、フランス国立図書館などに作品が収蔵されている。 著書に「WONDERLAND1980~1989」、「遠い夏」、「WONDERLAND」「東京手帖」、「砂町」、 「下町純情カメラ」など. 日本写真協会、日本写真家協会会員、ニッコールクラブ顧問、大阪芸術大学客員教授。
ジェレミー・ステラ │Jérémie SOUTEYRAT
1979 年フランス生まれ。東京在住。 2001 年に理工科を卒業。多くの国々を旅することを通し、次第に写 真を自己表現の手段とすることを考えはじめる。レイモン・ドゥパルドンの作風に影響を受け、彷徨写真と いうジャンルに出会う。2005 年に来日し、日本に”一目惚れ”する。一年を費やした自己制作による初の作品、 パリに暮らす若い世代のアフガニスタン移民の日常生活のドキュメンタリーは「ル・モンド」をはじめ数紙 に掲載される。新たな文化と異なる生活様式と出会いへ欲求はさらに高まり、2009 年、日本を拠点に活動す ることを決意。東京から、「ガーディアン」、「エル」、「ビジネスウィーク」、「テレラマ」、「リベラ シオン」等、欧米の一流メディアからの発注に対応する。ドキュメンタリーからポートレート、建築写真ま で自身が大きく影響を受けた小津安二郎、ホウ・シャオシェン、エドワード・ヤンなどの映画監督と同様、 制作アプローチには常に人間を中心に据えている。2014 年、初めての写真集「東京の家」がフランスで出版される。